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 引用028 『青銅の悲劇 瀕死の王』


 斑木と生まれや育ちが似ていたわけではない。大学のキャンパスで顔を合わせる以前のことはほとんど知らないのだ。出身は東京のようだが家がどこにあるのか、どんな環境で育ったのかもわからない。世俗の経歴を問うことなど無意味な、バリケードに舞い降りた凶暴な天使、白い焔をあげて自身を灼きつくす熾天使があの青年だった。

 父は第二次大戦の末期に南アフリカのアガラス岬沖で戦死し、祖父は敗戦の少しあとに獄死したと、どんな話題のときだったか斑木が偶然のように口にしたことがある。というからには父親はドイツに向かう、あるいはドイツから帰国する潜水艦の搭乗員だったのだろう。

 十数年前のことだ。パリで偶然に再会したのは。しかし私が帰国してからは行方が知れない。どこに消えたのだろう。業苦に満ちた地上から清澄な天上に帰ったのか。いや、そんなことはありえない。あの青年に、この地上を見棄てることなどできたわけがない。いまでも斑木はどこかで闘い続けているのだろう。世人には理解困難であるような徹底して抽象的な闘争を。

  笠井潔『青銅の悲劇 瀕死の王』P.510





2009⁄10⁄21 00:30 カテゴリー:引用、もしくは考えるべきこと comment(0) trackback(0)











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